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「プロット」という単語の功罪

エッセイ

そもそもプロットというのは必要なのか

「カクヨム」にしても「小説家になろう」にしても「プロットの必要性」という議論から入ってしまいがちですよね。そういうエッセイ・創作論をたくさんみてきました。しかしながら、敢えて言おう。結論から言うと「どっちでもいい」です。プロットがあった方が書きやすいならプロットを立てるべきだし、無い方が自由に書けるというのなら無い方が伸び伸びと書けて良いでしょう。

とか書いてしまうと4行で話が終わってしまうので、ここでは私のおすすめプロットの作り方をご紹介します。ええ、「プロットの作り方」なんて、ググればいくらでも出てきますし、どれも正しいと思っている派なので、であるならば、私流のプロット作りをお見せした方が良いかと。とはいっても、今作ってるプロットはお見せするわけにはいかないし、作品が完結したら古紙回収に出してしまってるので手元には一つもプロットがありません。

まずは「そもそも物語を創り出すのに何が必要なのか」を考えてみましょう。

プロットというものの定義がそもそも曖昧だ

そもそも「プロット」に正解があるのかというと、私は「無い」と断定します。その人に合ったやり方は、それぞれに異なっているからです。厳密詳細に作りこんだものを正義とする人もいれば、起承転結を3行でまとめるやり方が最高だという人もいます。小説書きを10人集めて「プロットってどんなの?」と訊いたら、10人とも違う答えをすると思います。そう、当事者間ですら、プロットの定義がテキトーなんです。それはですね、このプロット云々の議論の段階に至るまでに。抜けてるものがあるんですよね。

そもそも大事なのは実はプロットじゃない

いきなり否定しちゃいますが、「プロットは大事じゃない」んですよ。保険的な意味であった方が良いと個人的には思うのですが、プロットにこだわってる人は、もっと大事なものを見落としてる・忘れてる。よほど特殊な小説でなければ、必ず出てくるものがありますよね。そうです。

  • 世界
  • 人物

この二つです。プロットなんて、この二つががっちり作りこまれてれば無くても良いんです。プロットの作り方とか検索してる場合じゃないんです。自分が表現したい「世界」をどう作るか。自分が描きたい「人間(あるいは他種族)」をどう作るか。ここが緩いと、「人物」は「曖昧な世界の中で暗中模索」することになるし、あるいは「世界が人間に対してちぐはぐになる」ことになる。

「世界」と「人間」を作れ

プロットがどうこうと言ってる暇があるなら、「世界」と「人間」を作る。作りこむ。徹底的に頭に入れる。なぜならあなたはその世界の「神」です。全知全能であるべきです。

「世界」と「人間」は切り離せない

世界に影響を受けない人間はいないし、(物語の主人公たちなら)世界に影響を与えない人間もいない。「世界」っつっても、全地球規模で作れ、全宇宙規模で作れと言っているわけじゃありません。たとえば東京を舞台にした物語なら「その東京」と「その東京がなぜ、今(物語の中で)、その東京になっているのか」が説明できればいい。そして「人間」。彼らは「なぜそこにいて」「なぜそんな考え方をして」「なぜそういう行為にでるのか」あたりが説明できるだけの人格構築ができていればいい。このへん、プログラムでオブジェクト指向とか勉強するとすんなり落ちてくるところなんだけど、それを解説するだけで何記事も使ってしまうので今回は端折はしょります。でもオブジェクト指向は、文章を構成したりするときにすごく役立つと思うので、「小説書きに向けるオブジェクト指向」という題で一本書こうかな。とか、思っています。

とにかく、「世界」と「人間」を完全に作ることが大事です。どのくらいが目安になるかというと、その「人間」の日常生活がイメージできるかどうかという所です。「〇〇と言われた」→「××と反応する」というのが理屈なしに出てくるようになれば、作り込みは十分であると言っていいでしょう。この辺もオブジェクトの入出力の話になってくるのですが、そこががっちり作れていれば、あとは「題材」「事件」「困難」などを与えてやれば、「人間」たちが勝手に処理してくれます。まさに「神」の視点ですね。

たとえばどんなふうに?

ちょっと脚色したり隠したりしてるところはあるのですが、私も参加している「カクヨム小説wiki」が参考になるかと思います。例えば私のフラッグシップ作品である「セイレネス・ロンド」関連項目を見てみてください。ここから三部作それぞれへのリンクに移動でき、公式へのリンクも貼られており、かつ、ヴェーラ編の(ほぼ)全登場人物の紹介もご覧いただけます。最低限、このくらいは作らなければ(頭に入っていなければ)、破綻のない大長編は作れません。長編(10万文字くらい)だったらもうちょっと少なくて良いかもしれません。人物の作り込みも同wikiを参照してください。できることならウマヘタ関係なく、キャラクターイメージイラストを作ったりするのもいいかも。今だと、CHARATとかカスタムキャストとかありますからね。絵が描けなくてもビジュアルイメージできるというのはすごく大きいと思います。こういうツールを使いましょう、ぜひ。私は自分で描く方が楽だなと思っちゃいますけど、そこは人それぞれ。

言語化できたら記憶しろ!

という具合に「世界」と「人間」を言語化出来たら、全部頭に入れてください。全部です。そうすることで脳内にキャラクターオブジェクトと世界オブジェクトが生成されて、あとは勝手にクラスを呼び出してメソッドを……って不意にプログラマっぽいアレになりましたが、オブジェクト指向が理解できてる人とはこういう時に話が合うので便利。

閑話休題して。

つまり頭に「世界」と「人間」が入り込むと、あとは勝手に動き始めるんです。その一方で「(人間が)動かない」、あるいは、「(人間を)動かしている」作者は、

  • 「他の(創作・たとえば映像)世界」や、「現実世界」を言語化する能力がまだ足りてない
  • 「世界」と「人間」の作り込みが足りてない

の、どちらかです。本来、作者(=神)は、「光あれ」と言うだけで良いんですよ。そしたらあとは勝手に「世界」が出来て、週休六日です。やることといえばせっせと観察日記をつけるだけなんですね、実は。あ、休みねぇや。

肝心のプロットの話は?

あくまで私の場合ですが。

H3タグで敢えて書いていますが、「あくまで私の場合」です。すごく単純。すごく簡単。

手書きです。

なんと! この! デジタル人間が! 手書きです。というか、プロット書く時くらいしかシャーペン使わない。罫線も何も入ってない紙(ていうかA4のコピー用紙)、10万文字に対して2ぺージ(表裏というより、2枚の表面だけ)で起承転結、あるいは序破急をまとめます。私の作品は序{序破急}破{序破{序破急}急}急みたいな構成が多いかな。後半畳みかけるような感じが多く見えるのは、こういう構成を意識してるからです。この例だと、「破」の後で「急」が3つ繋がりますからね。

紙にシャーペンで書くのは、付け足したり削ったりいたずら書きしたりするのが楽だからです。自由な発想ができるというか。やれ図形描画だ、やれ位置調整だと、そういった本筋都は無関係な所にリソースを食われるのを防ぐことが出来るからですね。そして「2ページ」。この分量でまとめ切れるかどうかで、「面白さがぶれるか否か」が決まります。前のエントリーも参照してください。

「世界」と「人間」ができたら、あとは「この紙」だけを混ぜ合わせる

たとえばJavaで言えば、「作品Class」のMainメソッドを呼び出すだけです。と言われてもよくわからないと思いますが、要は「さぁ、舞台とシナリオは与えた。あとは諸君らの好きにしろ」と言うわけです。この「シナリオ」がたった2ページの走り書きと言うのがポイント。キャスト(人間)たちは、その中途半端な情報を見て、それぞれに与えられた特性を使ってどう演じるかを決めていく。これが「キャラが勝手に動く」状態なんですね。

そこまでできるようになっているのなら、別にプロットがどういう形でも構わない。キャラたちが演じられるだけの十分な世界や人格が設定されていればプロットなんて「好きにして」の一言でも良いかもしれない。

であるからして、プロットにこだわる理由はありません。ただ、長い作品をじっくり書くというのであれば、道しるべとして置いておくと、気持ちが少し安定します。

「登場人物」が「世界『観』」を語れるかチェック

プロットを書き始める前にすべきことなんですが、敢えてここに持ってきました。私の考えに過ぎないかもしれませんが、「世界観」というのは「神の視点」で語るべきものではない——と思っています。その世界に生きている人々(登場人物)たちが、その世界をどう思っているか・どう感じているか・常識/非常識のボーダーをどこに置いているか、そういうものが「世界観」だと思っています。なので、登場人物の口から自然に「世界観」が出てくるか(出てきているか)どうかをチェックする必要があります。「世界観」を読者と共有できなければ、感情移入も没入感もあったものではないからです。

これができているならば、物語はもうできたも同然です。10万文字頑張って書きましょう。というより、「世界」と「人間」を観察していれば、自然と物語ができているはずです。とにかく「世界」と「人間」を作り込む事です。彼ら「人間」を動かしていては駄目です。動いてもらえなければ、まだ作り込みが甘い、ということです。

自分に合ったやり方を見つけるまでは、ひたすらトライ&エラーになると思いますが、令和の時代はまだまだ長い。焦らずやっていきましょう!!(三時代をまたいだ男の開き直りである)

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