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自作品が面白くないんじゃないか症候群

エッセイ

これ書いた頃は私も現役の小説書きでして、色々思うところがあったのでアレでしたが、今(2021~)はその立場から離れております。色々直したいところも出てきているので、ちょっとずつ修正していこうと思っています。

創作家の誰もが罹患する病気

今書いてるこの作品、面白いの? 症候群

突如発症するこのシンドローム、「自分の作品が面白いかどうかわからなくなってしまう」症状。なんか書き続けているけど、面白いかどうかわからない。誰かに「面白い」と言われても、いまいちそうと信じられない猜疑的な気持ちが表れる。そもそも「何が(自分にとって)面白いのかわからなくなる」「自分には面白いけど、他人から見たらどうなんだろう、超不安」そんな症状。

覚えありますよね? ありますよね??? ていうかあるからこの記事読んでるんだと思います。

ええ、私もしょっちゅうでした。というか、思わなかったことがないです。たぶん。

そして書き終わってしばらくしても「何が面白いのかわからない」と頭を抱えることもしばしば。書いてる途中なんてもう当たり前のように「ここ、冗長すぎやしないか」「ここ読む人いるのか?」「ダルくね?」などといつも頭を掻きむしっていました。いや、ほんと。私を知ってる人には、当時私がサクサク書いていたように見えたかも知れませんが、一人悶々と苦しんでいたりもしたんですよ、いやほんと。

でもね、こんなことは考えても仕方ないと思うんですよ。自分が面白いと思う方向を定めて、そっちに突っ走る以外は。「自分にとって面白いって何?」という疑問を常に持って、それを明確にしておくこと……を忘れるとブレッブレになります。ブレてると「面白いかどうかわからない」以前に「なにが面白いと言える要素なのかわからない」になっちゃいますから。

端的に言うと、作品の面白さとかいう漠然としたデカイ主語で語るようなものではなくて、「自分が読者だったら、この作品に何を期待するだろうか」という分析的観念ですね。それをもっておくこと。そこが自分にとって明確でなければ、修正すればするほどドツボにはまります。だって、自分の中での基準がなかったり崩れたりしてるわけですから。

その作品の魅力を3行で語れ

その分析的観念を確立した上でですね、すべては。ちなみにこの「三行」は喩えです。「こことここがこうなってこうなるのがポイント!」って感じでサクッと言えればいいかな? 後述しますが。

ただ、その「分析」が完璧である必要はこれっぽっちもなくて、ただ「言語化」できればいい。「この作品における面白さは〇〇である」と言えさえすれば、おのずと修正やら何やらもその方向へ向かうはず。ただ、漠然と(言語化せずに)面白さの存在だけを肯定していても、それはいわば自己満足。「作品の魅力を3行で語れ」と言われて即座に語れない作品は、つまり、その作品に於いて、作者の「面白さ」の軸がぶれているということです。何度もいいますが、作者の中で「おもしろさ」というものが確立されていなければ、物語の「おもしろさ?」も良くてブレブレになります。もっといえば「この物語はこうこうこういう性癖の人にぶっささる!」と確信を持てているかとか、そういう話になるかなと。結局「性癖」が大正義なんだと私は思っています。作者はたいがい変態で多方面性癖を持つ生物と思っているのですが、ゆえに、特定の性癖を狙った作品を生み出せるのではないかと。汎用ユニットより特化ユニットのほうが使いやすいじゃないですか、シミュレーションゲームだと。そういう話です。

で。

面白いかどうかわからなくなった症候群」にかかったと思ったら。まずはその作品の魅力を3行で語ってみましょう。3項目箇条書きでもいいです。多くても少なくてもダメ。面白さと称してダラダラ書けるのは、まして面白さ?というのがブレている証拠です。そして、3つも書けないというのなら、それは自分の作品の掘り下げ不足です。そもそも本当に面白くないのかもしれません。作者自らをして3つの「面白さ」がパッと浮かばないというのなら。「面白さ」は「セールスポイント」です。

……本当に魅力がない気がしてきた

3つとか3行とか無理なんですけど。そういう方はチャンス。足りない分を純粋に足せば良いんです。足すだけです。例えばアクションを入れてみるとか、SF要素をぶち込んでみるとか、主人公たちにトラウマを植え付けるとか、あるいは逆に何かスカッとするようなカタルシス的なものを付け加えるとか。足すのは簡単です。言うのも簡単。

足りないなら足せばいいんですが、問題は軸がぶれてる時。つまり、たくさん魅力があるように見えてしまっている時。そんなに欲張っちゃいけません。その魅力で挙げたポイント、いったん全部「付箋」に書き出してみてください。そしたら次に、似た要素同士を近づけて配置する。そして一つの大きな「面白さ」にする。その追及(追求)を繰り返して、三つの面白さに絞ってみてください。「どこのグループにも属さない面白さ」は思い切ってオミットしましょう。削除です。切り捨てです。

とか言ってますが、これ創作論じゃなくて私のやり方ですからね。こうしたら良くなるとかいう保証はないですよ。数多く書いてきた私自身が「すっきりしないなぁ」と思った作品をバラしていったらこうなった、という経験談だと思って受け取っていただければ。

話を戻しまして。

で、それで小説の流れはかなりスッキリするはずです。整理された流れというのは、読者に安心感を与えます。テンプレに忠実な作品がウケている現実を見れば、作者がどういおうと、読者が何を求めてるかは明白ですよね。そして「三つに絞られた面白さ」をブーストするんです。少々大袈裟に。

そんなわけですから、作中に於けるテンプレ破り、堤防決壊、どんでん返しは、一度で良いんです。何度もやるという作品もありますし、もちろん「だめ」じゃないんですけど、「自作の面白さがわからない……」とか言っている段階の方には複数回使用はちょっとレベルが高すぎるように思いますよ。

読者はエンドレス・ケーキバイキングの真っ最中

あれもこれもと詰め込みたくなる気持ちはよーくわかります。面白い要素は詰め込みまくりたいですよね。だって読者を楽しませたいんですから。それは素晴らしい考え方!

でもね、考えてみてください。読者は常にケーキバイキングの渦中にあるんです。どこを向いてもおいしそうなケーキ(他の作者らの小説作品)に溢れている。えらばれるところからして大変な状況なんです。その中で、読者はパフェを求めてはいません。だって、ほかのケーキが食べられなくなるから。

であるのなら、「私はこんなにおいしいんですよ、チョコが最高級品ですからね」とか「私はフランスで20年修行してきて店も持ってるパティシエによって作られたんですよ」とか「うちのマカロンを知らない? モグリだね!」とか、とにかく「〇〇が××だ」という文脈で紹介できなければ、誰も見向きもしてくれないってことです。パフェ好きにしか振り向かれたくないというのなら話は別ですが、ぶっちゃけパフェは難しいです。作者自身が満足・納得できるレベルのパフェって、大御所でも作れてるのか疑問。こと著名作品は読者的には大喜びなのでいいのかもしれませんが。

逆にですよ「うちの〇〇は××だからぜひ手に取って」と言える作品は強い。宣伝文句とかじゃなくて、タイトルやキャッチでそれが出来てる作品はなお強い。長文タイトルってのもそういう生き残り戦略から編み出された技ですよね。作者名とかのブランド力で売る力がない(=殆どの作者)のなら「見てくれ(外見)」で勝負をかけるしかない。手に取ってもらえなければそもそもお話になりませんからね。

面白いかどうかわからなくなったらチェック

つまり、面白いかどうかってのは「3行でアピールできるか」ってことなんですよ。やってみましょう、3行で。3行っていうと抽象的なんですが、要はね、Twitterでアピれるかってことです。そんなSNSは邪道だから使いたくないぜ、とか、宣伝は気が引ける、とか言う方は、そのメンタリティと「読まれたい気持ち」をしっかり見つめなおしたら良いと思います。何が何でも読まれたいというのなら、とにかく動き続けるしかない。それが成功しようが失敗しようがどうでもよくて、とにかく「名前を売る」ことが必要なんです。飛び込み営業のようなものです。

飛び込み営業をするといったって、徒手空拳無為無策で突っ込むわけじゃないですよね。資料作って、3分・5分で商品やサービスの魅力を伝えられるように練りまくりますよね。私もコールセンター勤めが長かったので、その辺は良く承知しています。3分話を聞いてもらえれば御の字。そこから先に興味を持ってもらえるかどうかっていうのがテクニックーーつまり作品そのものの魅力であり、作品をアピールする力です。それがオンライン上では140文字未満でサクッと魅力が伝えられるかどうかっていう話なんです。

自作品が面白いかどうかわからなくなったら——とにかく1つのツイートでできる範囲で作品の魅力が語れるかをチェックしてみてください。というか、語られるようにしてください。これができるようになったら、この症候群シンドロームは快方に向かいます。

まとめ

  • 物語を書き始める前に「おもしろさ」の軸をしっかり定義すること
  • 物語を書き始めたら、とにかく軸をぶらさないこと(自分の定義を信じろ!)
  • 書き始めてしまってから軸がぶれ始めたと思ったら、その軸の必要性から再考すること(言語化すること)

これで書いてる最中に「面白いかどうかわからないー!」という厄介な精神状態に陥らずに済みますし、陥ってもきっちり軌道修正ができるようになります。私も行き詰まったらこれをやって整理するようにしていました。一番最初の定義に立ち返る。これ、結構勇気がいりますが、やってみると意外と近道です。

また、モチベーション的に個人的におすすめしたいのは「ブレてようがなんだろうが、一旦いい感じの所まで書ききる」「それから軸を見直す」「改稿する」を繰り返すのがいい感じだと思います。途中途中で立ち止まっていては、完成するものもしないので!

というわけで迷ったら基本に。そして基本に立ち返るためにも最初に「色々考える」。急がば回れ。がんばってくだされ。

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