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「書籍化作家」というタイトルの価値

エッセイ

「書籍化作家」になりたいか?

今現在、「書籍化作家」という肩書(タイトル)が欲しいかと問われたら。

「あなた(出版社)は私の作品を何部印刷しますか」と確認します。10万部未満ならお話になりません。一冊仮に100円印税でもらえるとしますよ。実際は文庫本で100円は、(現在の常識では)多すぎると思いますが。でも、100円×10万部では、たかだか1000万円にしかなりません。「1000万円もらえたらすごいじゃん!」という人、よく考えて。(実際はここに所得税とかのおっかない税金がかかるんだよ……)

あ、これは「私の作品が10万部売れるクオリティだから」とかいう話ではありません。声をかけるなら「10万部売れる、あるいは1000万円以上払えると確信をしてから」にしてくれという話です(無理でしょうねw)。あと、ナンピンマーチはプロの世界ではご法度ですよ。

さて話をもどして。

ざっくり、サラリーマンの年収は300~500万円くらいです。めんどいので500万円としましょう(多いほうですが)

「1000万円の印税」=サラリーマン2年分の収入

これだけ見ると、圧倒的に「印税」有利ですね。が、サラリーマンは簡単に職を失いません。病気になれば手当が出たりします。会社の保険制度、福利厚生、いろいろあります。

が、「印税」だけで暮らす専業作家=個人事業主は、そうではありません。モチベーションが0になった瞬間収入も0です。将来の年金だって悲惨なことになる。誰も守ってはくれない。しかも「出版社」を経由する以上、彼らは守ってくれない上に、都合が悪くなったら打ち切ります。契約社員や派遣社員よりも悲惨です。そこから再起できる人は一握りです。あとで出てきますが、3年で半数消えます。もっとスパッというと、半数が3年でクビになるか退職するか病気になるかします。

じゃぁ、副業でやればいいじゃん

副業でやればいい」という声が聞こえますし、私の知り合いの書籍化作家は多分全員副業作家です(だよね?) 要は「書籍で小遣い」を稼いでいるレベルです。プロですよ? そのすじの人ですよ? それが「小遣い」しか稼げてない。そんな馬鹿な話があるかと。「素人作家に小遣いをくれてやってる」程度の認識でいますよ、出版社は。いや、否定するなよ(笑) 月換算2、30万出せてやっとこさ「プロっぽい」扱いですよ。「それだけで生計を成り立たせられてはじめてプロ」ですから。そこ基本定義にしてるのであしからず。プロですと名乗るなら、時給換算5,000円は必要かなぁ。お金中心の話で申し訳ないけど、ここは資本主義の国なので……。

作家が副業 → 品質も落ちるわけ、です。あたりまえですよね、主たる業務がある人が「余力で」本を作るわけですから、「主たる業務として」作品を作る人を超えられるはずがありません。サルでもわかりますよね? その作家によほど化け物みたいな才能がない限り、「既にそれだけで生きていけている人」に勝てるはずがないんです。結果、今の大御所を超えられる人は出てこない(無論のこと、ゼロとはいいません。が、思い当たる人は総じて化け物です)。作家の文化は現実と乖離していって衰退する。簡単な論理のはずなのに誰も言わない。なぜだ。

書籍化作業がどれほど大変なのかは私にはわかりません。が、やってることはブラック企業の論理ですよ。

「書籍化作家」というタイトルを餌に、その人の「夢」を餌に、1割にも満たない印税を対価にして出版社を潤わせるためのものを作らせているわけですから。しかも、成績が出せなければ即刻クビ。本来「売りに回らなきゃいけない」側の立場=営業(出版社)は簡単にはクビにならないのに。

10万部売る気や能力がないなら、または、作家に1冊刊行1000万円払う気がないなら、そんな出版やめてしまえ。そう思うのです。そういう作品を選び出す能力がない選考なら意味がないと。

(すごくしつこいかもですが、「私の作品を選ばないようなら云々」なんていう歪んだ思いは持ったこともないし持ってもいないし持つこともないです。そりゃ、コンテストや公募におちたらガッカリはするけども。一応言っとくからね)

だって、そんなに書籍自体売上ないし不況だし……もし、出版社の人間がそんなことを言うとしたらお笑い草です。

  • あなたがたの仕事はなんですか?
  • 出版業界をどうしたいと思ってますか?
  • 10年後まで作家を生き残らせる手段はあるんでしょうね?

これが明確に答えられない業界なんて、信じていいはずがありません。あまりに悲惨過ぎます。新入社員面接でも訊くやん、似たようなこと。

作家1冊1000万。印税を10%(実際はもっと低い)として、1作品で1億円分売り上げればいいんですよね。1億円がイヤなら印税率を50%にして2千万円分売れば良いですよね。コスト削減は企業のやる気と長期計画次第でどうにでもなります、実際(無論、紙媒体や、現在の電子媒体にこだわる必要すらない)。一冊1000円として、たった20,000部売ればいい。実際の所「2万部」は難しい数値。知ってます。2万冊売れたら凄いじゃん。知ってます。

が、それは「今のやり方では難しい」「今のクオリティでは難しい」ということですよね。やり方については出版業界が言っちまえば無能だから悪いわけですし、クオリティは作家に十分な金が入らない以上、担保のしようがない。論理的に考えれば誰でも理解できる程度の話です。また、最初からメディアミックスを前提に戦略を立てていれば(そしてそれに耐えうる作品だと一番最初から見抜いていれば)、もっと金銭の敷居は下がるのです。

印税7~10%みたいな数値が、いかに馬鹿げて狂っていて時代錯誤なのか。せめてクリエイターならばもっと頭を使って声を上げて欲しいところです。コアですよ、作家は。いなければ何も成り立たない。なのになぜこんな事になってしまったのでしょうか。どうして誰も声をあげない? 現状で満足なの? 5年、いや、3年後もこのまま「現状維持」できていると思っている? 印税の仕組みだって変わっていきますよ(better/worseはわかりませんが)

「書籍化作家」の門を狭めないでと言われるかもしれませんが、玉石混交の行く末は緩やかな滅びです。AIに作家の仕事を奪われるとか言っている場合じゃない。それ以前の問題なのです。

消費者(読者)は、人間の作品では「石」を手に取る可能性があると理解したら、一定水準を担保されるであろう「AIの作る作品」を選びます。「人間の作品? あたりはずれが多すぎてね~」……今のままだと数年以内に確実にそう言われるようになります。人間の書いた作品を読む人は、このままだと確実に「趣味人」「変人」そういったマイノリティに限定されるようになります。

そうなったら「書籍化作家」のタイトル自体が意味を失います。期限の切れた運転免許証のように。

半数が3年でドロップアウトする現実

今書店にいくと、文字通り「死ぬほどたくさんの」小説が次々と発刊されています。が、ラノベ作家の生存曲線という残酷なグラフがあるのですが、これが現実です。(※2年前のツイートです、一応)

3年で半数が消えます。3年ですよ? 年間4冊出すかなりのペースの作家ですら、たったの12冊。発刊すると1000万円もらえるとしても、その金額は1億2000万円(実際は所得税で手取りはガッツリ減る。しかも 実際は数百万円しか入らないと思います)。その後、どうなるんでしょう。夢がありません。

私自身、基本的にサラリーマンなので思うのですが、入社から3年だの5年だのでこれだけの人が離職する(というか契約を切られる?)職場でなんて働きたくないですよ。ノルマはあっても有給休暇もないしね。

つまり???

ツイッターの連ツイで「何をしたいのかよくわからない」と言われてしまいましたが、「何をするのか」を考えるのが企業の「経営企画部」とかそういう部署の人達です。一コンシューマの考えることじゃないし、考えたところで彼らが聞く耳を持つとも思えない。あるいは3年、5年先を見据えた戦略が既にあるかもしれません。だったらすまない(笑) とはいえ私らコンシューマに見えているのは「業界が今やってるルーチン(の表側)」と「現在進行系で書籍文化が衰退していっていること」と「作家の青田買いをやめようとしてないこと」くらいなので。

コンシューマのするべきことは、あくまで「おかしいことをおかしいということ」であり、「良いものを良いということ」です。それ以上の仕事は、株主か社員のすることです。要は「私=その他大勢の一人」ですね。不本意だが仕方ない(笑)

しかしながら「コンシューマは黙っとれ」と言われるのだとすればそれこそおかしい話。「コンシューマ=消費者」あっての商売ですよね。勿論、その次には「作家」あっての商売ですよね。であるならば、コンシューマたちに「書籍(くどいようだが紙とか電子とかの媒体は問わない)」を提供し、買ってもらって(あるいは別の収入モデルをつかって)ナンボですよね。

各人が「書籍化作家」に夢を見るのは大いに結構。目指すのも勿論素晴らしいことと思います。私だってなりたかった。だからこそ、「書籍化作家になっても食べていけない」「なったはいいが将来が不安」「体力がもたない!」「病気になった!」……そんな阿鼻叫喚な状況を「当然」「昔からそうだったし」「仕方ないよね」で終わらせたくない。

勿論、何年も生き残って楽しくやってる作家もいますよ、そりゃ。ツイッターでバカなことばっかり言ってる人もいますよ。しかし、「3年で半減」しているのは事実なんです。理由はいろいろあるでしょうが、消えた半数の多くは、書籍化作家に夢を見た人だったと思います。彼ら/彼女らは、どんな思いで去っていったのでしょうか。

すくなくとも今のままで良いとは、私には到底思えません。

↑のように言うと「具体案は?」とか言われちゃうのですが、(繰り返しますが)そういうのは企業の仕事です。私よりずっと頭のいい人が、しかも複数人いるんです。大手出版社がやる気になればなんだって動くでしょう。私がそこで「こうしたら」「ああしたら」というのは、私の時間の無駄ですし、彼らの仕事の邪魔でもあります。一コンシューマの私は「ここが変だよ」「こういうところが疑問」というだけです。実際、それしかできません。

さらば書籍化……!?

ここ(ブログ)にこういうことを書いたらもう戻れません(笑)

とはいえ、チャンスが来るようなら捕まえて問い詰めます。

……こんな事書いて、しかも32年無冠な私に、今更わざわざ声をかけてくる出版社はいないでしょう。あ、でも、その筋のプロに評価はされたいよ?(できることなら)

第一に「書籍化作家」になれなくても、創作辞めるつもりはないし。そこは間違いない。「大賞」とか取ってみたい。そりゃぁ一回くらいはてっぺんには立ってみたい。けど、そこから書籍化するかは別の話。これもしつこいかもしれないけど、「コンテストに出す以上は、書籍化できるレベルのものを出す」というポリシーには変わりはありません。コンテストに出る以上、自分の顔に自分で泥を塗るようなことはしません。手抜きはしません。

これも一応セルフフォローなのですが、まもなく始まる「カクヨムコン5」、私は非常に楽しみにしています。

ただ、スタンスとしては以下の2記事にあるとおりな感じでいきたいと思います。

どんな作品が出てくるのか楽しみです!

今回密かに狙っているのは「レビュー連鎖の発端になること」と「私のレビューした作品が受賞すること」です。

私もガチ作品の投入をしますが、新作投入はこれで最後かな?(笑)

表の顔では公開していない裏プロジェクトが凄いことになっちゃうかもしれないし、そっちのほうが今は優先度高いので。実証実験に失敗したら再び黙々と小説書くかもしれませんが、正直わからないですね! 受賞ならずでも高い評価を頂ければ続きやらなにやら書くと思いますし。ただ、「書籍化作家」というタイトルには、今現在全くもって関心がありません。それは本当です。

が、こういう状況に危機感を覚えているのも本当です。若い人が書籍化作家に夢を持てない、裏切られる……そんな世界、俺は……イヤだね(元ネタ通じるのか、これ)

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